エリート専務の献身愛
「だって、誰だって自分の好きな話が通じたらうれしいじゃないですか。そういうところから心を開いてもらえたら、もっと、今求めている情報はなにか、とかわかると思って」

 呆気に取られた浅見さんに、私はお酒のせいか熱弁をふるう。

「それに、私だって仕事とはいえ、堅苦しい話ばかりは嫌ですから」

 あれ? なんかちょっと……私って、こんなに熱かったっけ?
 心では思っていても、なかなか口には出したことなかったから。いざ、声に出してしまうと、ものすごく熱血感が……。

 急に頭の中が冷静になったとき、隣から高らかに笑う声がした。

「えっ。な、なんですか?」
「いや。本当、いつも真剣だなぁと思って。いいよね、そういうところ」

 浅見さんの笑顔は、今でも私の身体を熱くする。
 さりげなく手を取られ、歩き出す。

「んー。じゃあ、やってみる?」
「なにを?」
「ゴルフ」
「……え?」

 いきなりの提案に思考が止まる。

「だって、頭に知識入れるより、実際やってみた方が早いんじゃない?」
「そ、そうは言っても……。浅見さんは経験あるんですか?」
「まぁ、コース回れるくらいには」

 そ、そうなんだ。いや、でも私って運動神経よくないし。

「ゴルフは、運動神経は関係ないっていう説もあるから大丈夫」

 浅見さんって、どうして私が考えていることがわかるんだろう。もしかして、そっち系の能力ある人?
 そんな馬鹿げたことまで思ってしまうのは、やっぱり酔っているからかも。

「瑠依はわかりやすい」
「そ、そうなんですか?」

 またもや心の声と会話したような状態に、どもってしまった。

「うん。そこがまた可愛い」

 そして、さらりと甘いことを言う彼に、いつでも心を掴まれる。

 〝恋人繋ぎ〟の手をグイと引っ張られ、驚いて顔を上げる。すると、一瞬で唇を奪われて、思わず空いた手で口を覆った。

「なに?」
「……だって、焼き肉食べたから」
「ああ、ごめん。オレもだ」

 こんなふうに、日常に浅見さんが存在するなんて、夢にも思わなかった。
 なんだかんだと言ったって、私は今、幸せの中にいる。
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