エリート専務の献身愛
 三時過ぎに小樽には着いて、チェックインだけ済ませた。
 私たちのほかにも観光客がたくさんいる。その人たちに混ざるように、ガラス工房に入った。

「わぁ」

 確か前も訪れたはずなのに、こんなに感動したかな?
 見渡す限りガラス細工が展示されていて、それらが照明を反射させ、店内が煌めいて見える。

「これ、可愛い。あ、あっちも見てみたいな」

 思わず童心に帰ったようにはしゃいでしまう。

「混んでるし、オレのことは気にせず、好きに見て回っていいよ」
「いいんですか? すみません」

 気遣ってくれた浅見さんに頭を下げ、改めて店内を見る。

 手のひらに乗る小さな置物や、グラス。オルゴールもある。
 そっと手に取ってオルゴールを少しだけ鳴らしてみると、どこか懐かしい気持ちになった。

 
 購入したものは、自分用の小さなオルゴールとガラスのヘアピン。ヘアピンは、色違いでレナさんのぶんも買ってしまった。

 だって、レナさんの瞳と同じ色だったから、つい。

 袋を手に下げ、出口を出ると浅見さんがいた。

「お待たせしてすみません」
「いや。いいものあった?」
「はい! 一番気に入っているのは、レナさんへのお土産で……」
「一番が自分のじゃなくてレナのなの?」
「え? あ、自分のも気に入っていますけれど」

 浅見さんは「瑠依らしいな」と言って、手を差し出す。
 おずおずと手を重ねる。

 当たり前のように繋げる手。
 でも、やっぱりまだ自然に手を取ることができない。

 未だに目が合うだけでもドキドキする。
 
 でも、そのぎこちなさにも、彼は声を漏らして笑っていた。
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