エリート専務の献身愛
「あ、うん。すーちゃんは? 彼女とか?」
「いや。家族でちょっと食いに来た。……じゃあ、行くわ」

 すーちゃんはなんだかよそよそしい感じで、そそくさと行ってしまった。

 浅見さんに遠慮していたのかも……。
 浅見さんも、きっと気を遣っているかもしれない。

「同級生?」

 ぽつりと聞かれた質問に肩を上げる。

「は、はい。すーちゃんは小学校のとき、ずっと同じクラスで。六年間一緒ってすごいですよね。しょっちゅう遊んでいたんです。でも、すーちゃんとは中学は学区が違ったから」

 やましいことなんてなにもない。
 でも、やっぱり平気な顔して返答できない。

「へぇ。よかったの?」
「えっ? なにがですか?」

 淡々とした口調で言われ、いっそう緊張感が増す。

 浅見さんのこういう厳しい態度は、昔あった辻先生との件以来かも。
 ピリッとした空気は苦手。今はさらに相手が浅見さんだから、どうしていいのかわからなくなる。

「もう少し、再会を喜び合いたかったんじゃないのかなって」
「そんなことは……」

 どうしたら事態が修復できるかわからないでいると、板前さんにお寿司を出され、言葉を止めた。

 私たちは、黙々とお寿司を平らげる。
 お店に入ったときの緊張なんかすでに忘れ、お寿司の味もほとんどわからなかった。
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