エリート専務の献身愛
「星ってこんなにあるんですね。いつも上を向くことなんかしないから。でも、東京じゃ、そうそうこんな星空見れないかな」
「あ、流れ星」
「えっ。どこ?」

 まるで子どものように必死に探す。

 流れ星っていうくらいだから、その瞬間見つけられなきゃもう遅いとはわかっていても、目を凝らして空を見てしまう。

「あー、やっぱり見逃し……て」

 諦めて頭を戻そうとしたそのとき、違和感を抱く。
 おもむろに左手を動かし、薬指を見る。

「これ……」

 星空に吸い込まれている間にはめられた、ガラスの指輪。

「仮予約。さっき、ちょうどよさそうなの見つけたから」
「仮、予約……?」
「サイズ合っててよかった」

 色模様がついた、ちょっと太めのガラスのリング。
 私だけがひとりで買い物をしていると思っていたら、こんなものを用意していてくれたんだ。

 もう、胸がいっぱい過ぎて、なにから言葉にしたらいいのかわかんない。

「さ。本当に風邪ひいたら困るか、ら」
「うれしいです。ありがとうございます」

 総の言葉を遮って、私は人目も気にせず抱きついた。
 後先を考える隙間もないくらい、本当に本当にうれしかったから身体が勝手に動いていた。

 背中に手を回した私を、総もぎゅっと抱きしめ返す。

 広い胸。力強い腕。温かい鼓動。
 子どもっぽい感情も、大人なところも、全部――。

「大好きです」
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