エリート専務の献身愛
「きゃっ」
「じゃあ、あと少しの間は、この距離を楽しむことにするよ」

 総の胸にくっつけた頬から、速い鼓動を感じる。
 私と同じように、ドキドキしてくれて、喜んでくれているんだって思って頬が緩んだ。

 ようやく少し、照れが収まってきたところで総を見上げる。

「あ。ゴルフって……」

 どうなったんだろう?

 昨日は途中からすっかり忘れていたけれど。元々、ゴルフを教えてくれるために北海道に呼んでくれたはず。もう朝八時になっているのに、私たちは悠長にまだベッドの中。

 総は肘をついて自分の頭を乗せ、私を見下ろして笑った。

「ああ。初めからコース回れる人なんていないよ」

 そして、ケラケラと可笑しそうに言って目を細める。

「浅見さんの……総の、意地悪」

 私は、じとっとした視線を向け、頬を膨らませた。

「今日も天気いいみたいだし、せっかくだから打ちっぱなしには行ってみようか」
「え。やっぱりやるんですか?」
「瑠依、筋肉痛、覚悟しておいたほうがいいよ」
「えぇ! 明日からまた仕事で歩き回るのに」

 そんな他愛ない会話を交わし、自然とキスをし、手を繋ぐ。

 穏やかな時間。
 幸せな日々。

 近い未来に、こういう毎日をお互いに約束し合う日を迎えられますように。

 私は総と白いシーツの上で笑い合いながら、薬指をそっと包み込んだ。






番外編 おわり
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