エリート専務の献身愛
「お疲れ様です。ただいま戻りました!」
夕方六時に帰社してすぐに、部長に言われる。
「ん? 今日はえらくいい顔して……もしかして」
「はい! 採用して頂くことになりました!」
鬱陶しいくらい落ち込んだり、そうかと思えばバカみたいに笑顔になったりって、部長もこんな部下を持って大変だ。
自分で自分を面倒なヤツと思ってはいても、うれしい気持ちが溢れてしまう。
「説明会でこんなにうまくいったこと初めてなので、もううれしくて」
「そうか。お疲れさん。じゃあ、今日は報告書も捗るかな?」
「そうかもしれません」
上司の言葉に対し、調子に乗って答えちゃうくらいだ。
まあ、誰でもというわけではなく、うちの部長が優しいって知っているからだけれど。
それでも、これ以上は失礼になりそうだと気を引き締める。
「ほかのみんなは接待や直帰と連絡があったし、城戸さんもそれが終わったらたまには早く帰りなさい」
部長に言われ、周りを見たら確かに誰の姿も見えない。
この仕事は直行や直帰が認められるけれど、実際なんだかんだとやることがあって一度社に戻ってくることが多い。そのため、直帰って珍しく感じた。
とはいえ、仕事の仕方によってはありえなくはないし、もしかしたらほとんどが接待とかまだ営業回っているとかかもしれないな。
カバンを置き、自席の引き出しを開ける。
「はい。わかりました。あ、先月の経費の書類って確か今日までってことなのでそれもやってから……」
私の横まで来た部長が、私の手からスッと領収書のファイルを取る。
「どれ? 貸してごらん。今日頑張った褒美にやっておくよ」
「えっ。そんな、部長にやってもらうなんて」
それに、部長より先に帰るなんてできない。だけど、ファイルはすでに持っていかれてしまっている。
どうしようと狼狽えていると、部長は自分の椅子に腰かけて言った。