エリート専務の献身愛
碧い……瞳。

綺麗な黒髪とはミスマッチな美しい瞳の色を、覚えている。
月島総合病院ですれ違った彼女と浅見さんは知り合いだったの?

顔立ちや背丈から純日本人ではなさそうだし、アメリカから来た人なんだ。

至近距離になるときに、咄嗟に顔を逸らし俯いた。

どうか気づかれませんように……!

なぜか鉢合わせるのがいやで、息をも止めて心の中で祈る。唇をぎゅっと結び、眉を寄せた。
ふたりが私を通り過ぎた直後、会話が耳に届く。

「またここですか? ずいぶん気に入ったんですね」

 女性の声を聞き、チラリと振り向き様子を窺った。
 私の方向に背を向けている浅見さんは、ポケットに手を入れ、店の前に出ていた黒板のメニューを見ていた。

 浅見さんの一歩後ろに立つ女性は続ける。

「でもうれしいです。総が、わたしを日本にまで連れてきてくれて」

 彼女の言葉に、やっぱり浅見さんと一緒に来た人なのだと確信した。

 でも、彼女とはどんな関係なのだろう。ふたりともスーツ姿だ。ということは、部下かな? そういえば、昨日浅見さんが家に来たときに、『相棒に任せてきた』って言っていた。それが、彼女……?

ふたりの後ろ姿を横目で見つめていると、浅見さんが彼女に言った。

「まあ、レナは隣にいるのが当たり前だし、ほかとは違うから」

 彼の言葉が耳にこびりついて離れない。
 知らぬ間に、私は手を胸に当ててグッと握りしめていた。

「だったら、あまりわたしをひとりにしないでほしいです」
「気をつけるよ」

和やかな雰囲気で交わされる会話。
それは、どう考えてもただの上司と部下には思えない。

< 89 / 200 >

この作品をシェア

pagetop