エリート専務の献身愛
瑛太くんからもらった手紙をポケットに入れ、泌尿器科に向かう。
本当のところ、辻先生に会うのは避けたいけれど、仕事だし、なによりついさっき、瑛太くんに元気をもらったから頑張れる。
医局の前で立っていると、辻先生が姿を現した。
「辻先生! お疲れ様です。今日は新しい献本をお持ちしました」
「あ、城戸さん。待っていたよ」
「え?」
本を持つ手を一瞬引っ込め、身体を硬直させる。
結構煙たがられることの多い、この仕事。それなのに、ニコニコ顔で『待っていた』だなんて言われると、光栄に思うどころか警戒してしまう。
そう思ってしまうのも、普段からちょっと馴れ馴れしい辻先生だからだけれど。
辻先生を恐る恐る見上げると、思っていたような下心のある顔ではなくて拍子抜けした。
「この間から勧めてくれてた薬。くれてた資料とか、ようやく目を通せたんだ。で、興味が湧いたんだけど……」
「本当ですか!」
彼は、私の手から本をスッと受け取り、爽やかに微笑む。
「うん。詳しく聞いてみたいなぁって思ってはいるんだけれど、今は時間がなくて……今夜なら少し時間取れるけど、食事は規則違反でしょ? 院内でなら話できる?」