人事部の女神さまの憂いは続く



「なぁ、なんで“たーくん”なの?」

ぐったりしている私の頭を撫でながら藤木さんに聞かれた。

これ言ったら、またへこんじゃわないかな、とちょっと不安になったものの思ってたことをそのまま言葉にする。

「だって、“崇”なんて、きっと藤木さん今まで何百回と色んな人に呼ばれてますよね?なんか、それはヤダなって」

皮肉じゃないんだよ、ってことを伝えたくて、じっと目を見て話していると、私の大好きな目じりがちょっと下がった表情になった。

ほっとして思わず笑みをこぼすと、チュっとおでこに唇を落とされる。

「やきもちですか、ゆりさん?」

からかいながらも、甘い笑顔の藤木さん。

そこにはさっきケンカをしていた時のような不安は見えなくって、安心する。

「そうですよ。だから、私だけのたーくんでいてね」

そうお願いをすると今度は唇が重なった。

なんか幸せだな、と落とされる口づけに溺れそうになりながら、ふと思う。



なんで、さっきまでケンカしてたんだっけ?

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