人事部の女神さまの憂いは続く
そんな私の淡い恋心が動いたのはバレンタインデーだった。
受験生はすでに受験が終わっていたり試験直前で、予備校の校舎はガラーンとしていた。
その日も授業があった私は予備校に来ていたものの、バレンタインにチョコを渡すなんて先生が嫌がっている女の子たちと一緒になってしまう気がして講師室に行くのを迷っていた。そう言いながらも、手には先生が一番好きだって言っていたレーズンサンド味のチロルチョコ。
しかも1つじゃなくって、人生で初めて箱買いをしてしまったのだ。かわいくバレンタイン用のチョコを買う勇気がなかったので、せめて気持ちが少しでも伝われば、そんな思いで持ってきたはいいものの、渡す勇気が出ない。
講師室のある階のエレベーター付近で迷ってると
「今日は質問いいの?」
いきなり、りゅう先生が講師室から顔をのぞかせたのでびっくりしてしまった。