人事部の女神さまの憂いは続く

家に帰って緊張しながらもメールを送ると、すぐに先生から電話が掛かってきた。

「連絡くれてよかった」

初めて聞く電話越しの先生の声は、いつもよりも柔らかくって、それだけでくすぐったい。

「あの、でも、なんで?」

予備校を出て紙を開いた時からの疑問を、少しだけ期待を込めて聞くと

「3月から週の半分、首都圏で授業持つことになったんだ。だから文系クラスと曜日合わなくって。君と会えなくなるのは嫌だなって思ったんだ。一度、校舎の外で会えないかな」

信じられない言葉が返ってきた。これって・・・と思って何も言えないでいると

「ごめん。無理かな?」

不安そうな先生の声が響く。それを聞いたら

「ち、違います。会いたいです」

思わず言葉が飛び出ていた。それから週末に、丘の上の教会で待ち合わせる約束をして、その日の電話を終えた。


< 16 / 399 >

この作品をシェア

pagetop