人事部の女神さまの憂いは続く

背中をポンポンとしながら話す藤木さんの手に気を取られながらも、気になったところを突っ込んだ。

「自分のものにしたいって思ったのって?」

ん?と、わざと聞こえないふりをしているような藤木さんを眉間にしわをよせてみると

「んー。お前の家最初に入ったとき?」

渋々というように白状した。自分で聞いときながら明確な答えが返ってきてびっくりしていると

「もっと前から思ってはいたけど、覚悟決まったのはあの時かな」

さらに言葉を続けられる。

あの頃は柏木さんに夢中だったなって思い出しながら、藤木さんの言葉にどう反応していいのか困る。思っていたよりも早いとか、遅いとかそういうんじゃなくって“覚悟”って言葉に戸惑ったから。

「覚悟って、そんな大層なもんですか?」

ためらいがちに聞いてみると

「そりゃそうだろ。相手、お前だよ?簡単に手出して、やっぱナシになんてできるわけないし、そもそもお前が全然俺のこと対象にしてないこともわかってたし」

これまた意外な言葉がかえってきた。

それで、前に藤木さんが巧に冗談っぽく言ってたことを思い出した。
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