人事部の女神さまの憂いは続く
ちょっとした私の嫉妬のせいで車なんて高い買い物を衝動的にさせるわけにはいかない。お兄さんに聞こえないようにこっそりと
「ほんと、昨日のはごめんなさい。ちょっとしたヤキモチです。だから、わざわざ買い替えなくってもいいですよ」
って言っても
「いや、俺が替えたいだけだから」
一刀両断されてしまう。どうしたら納得してくれるんだろう、と思いながら
「私、今の藤木さんの車好きですよ。おっきい車って乗ってって気持ちいいですよね」
精一杯今の車でいいよ、という意味を込めて褒めてみたものの
「そうか。じゃあ、あのラインだな。家族が増えても、使い勝手いいだろうし」
なんていいながら、お兄さんに新しいシリーズが入っていないか確認をし始めた。
そして呆然とする私にときより「何色が良い?」とか「シート、どっちがいい?」とか確認をはさみながら、下取りがどうだの、内装とオプションはいつもの感じでだの、納期がいつなどと言いながら、いつの間にか見積もりを出してもらっている。
いつもは頼もしいと思う行動力と決断力が、このときばかりはうらめしい。
結局、ハラハラしている私をよそに、ほぼ購入を即決していた。