人事部の女神さまの憂いは続く

なんでだろうと思っていると

「戸籍謄本とってこい。婚姻届け出す時にいるんだよ」

カウンターに置いてある用紙を渡された。そんなこと知らなかった。さすが何から何まで用意周到だな、と感心していると

「ほら、さっさと書け」と急かしてくる。

必要書類を記入して交付を待っている間に

「藤木さんのは?もうとってあるんですか?」

と聞くと

「もちろん」

なぜか自慢気だ。そして、せっかくだしここのもらっていくか、と言って婚姻届けを取ってきた。

「うわぁ。初めてみました。なんか意外におっきいですね」

初めて手にする婚姻届けに興奮していると

「お前間違いそうだし予備あったほうがいいか」

追加で2枚ほど持ってきていた。用意周到なところはさすが藤木さんだな、と思うものの一連の流れが冷静過ぎて、1人はしゃいでる自分が淋しく感じて

「なんか、すごい事務的ですよね」

文句を言ってみると

「事務手続きじゃん」

と返される。その言い方にムッとしたものの、ちょうど書類が出来て番号を呼ばれたのでカウンターに向かった。
< 30 / 399 >

この作品をシェア

pagetop