人事部の女神さまの憂いは続く
先週、藤木さんの実家にお邪魔した時もそう。
藤木さんからは想像できない穏やかなご両親と弟さんご一家で
「お兄ちゃんの結婚は諦めてたから本当によかった。ゆりちゃん、ありがとうね」
感謝されっぱなしで、この人たちと家族になるんだ、なんてじーんとしていた私をよそに、藤木さんはいつも通り。
「とりあえず一緒に住む家決めたから近いうち引越すわ。で、籍とか式とかは決めたら連絡する」
決定事項を淡々と報告していた。
そんなことを思い返していると、やっぱりなんだかもやっとする。
そういえばプロポーズも成り行きだったし。しかも、断られるなんて思ってもないような感じだった。
「なんか熱意とか情熱がないんだよな」
ぽろっと言葉が漏れると
「なんだって?」
すぐ後ろに立っていた藤木さんに聞かれてしまっていた。
「なんでもないです」
そう言ってその場をやり過ごして、現在に至る。