人事部の女神さまの憂いは続く
「まさか、崇が結婚するなんてね」
言いながらちょっとバカにしたように笑われる。
「そういうお前こそ結婚するって聞いた時びっくりしたよ。デキ婚だっていうし」
そう言い返すと、くすっとまた笑われた。
こいつが結婚したのは、俺が大輔と会社を興そうと会社を辞めて1年くらいが経った頃だったと思う。会社を辞めてからは顔を合わせる機会もなかったから、もちろん寝ることもなかった。
わざわざ、そのために会うなんていう関係でもなかったし。
同期からこいつが結婚するからって2次会の案内が来た時は意外だなって思った。
こいつは仕事するのに男は邪魔と言い切ってたし、計算高いから、予定外に子どもつくるなんてことはしないだろうなって思ったから。
相手が相当いい男なんだろうなって思って2次会に行くと、やっぱり予想通りだった。
「あの旦那は元気してんの?」
「元気なんじゃない?そろそろお義父様が退きたいって言って、正式に社長に就任するらしいし、忙しくしてるわ」
まるで他人事だ。