人事部の女神さまの憂いは続く
ニシユリが初めて付き合った、年上の男。
若そうな顔してたけど、多分俺と同い年かそれ以上か。きっと高校生のこいつにとっては、社会人で、しかも“先生”で、どっぷり甘やかされてたんだろうな。こいつがこんだけ甘えたなのも、あいつが元凶なんだろうと想像したところで胸糞が悪くなる。
そこで
「藤木さん?」
ちょっと心配そうなニシユリが視界に入った。
あー、ほんともう全部俺仕様に染め変えてやりたい、と変態的なことを思い始める自分にびっくりしながらも
「あぁ、悪い。でも、大丈夫だろ。俺は適当にかわすし、お前もなるべくニシユリ様でいたら久保くらいしか、しつこく絡んでこないだろ」
さっきまでのニシユリの不安に答えると
「まぁ、そうですね。がんばります!」
ひとり気合を入れている。
入籍も済ませたし、これから会社でも公表して、これでようやくニシユリは俺のものだ。それを実感したくて目の前のニシユリの頭に手を伸ばすと、くすぐったそうに微笑んでいる。あぁ、もう会社なんか戻らずにこのまま連れて帰って抱きたいな、と思っていると
「あ、電話だ」
スマホ片手にニシユリが店から出ていく。