人事部の女神さまの憂いは続く
引越してようやく落ち着いてきた週末。
結婚するという連絡は電話でしていたものの、課題とか柏木さんのところのバイトで忙しいと予定が合わず、ようやく直接会って報告ができるのが今日になってしまった。
「お邪魔します~」
新居のインターフォンが鳴ってドアに出迎えに行くと似合わないアゴヒゲを蓄えた巧が立っていた。
「なにそれ、似合ってないんだけど」
アゴを指さして爆笑してしまうと
「いやいや、ちょっとは渋くなってるだろ?」
不服そうにしている巧。
だけど、やっぱり似合ってなくて笑いが止まらないでいると、藤木さんも玄関まで出てきた。
「どした?」
言いかけて、私の笑いの原因がすぐにわかったらしい。
「それ、巧にはちょっと早いんじゃないかな」
藤木さんにしては珍しく濁した言い方をしているけど、ようは似合ってないってこと。