ピアスホールに君の熱
「アクセサリーとか興味あるの、お前」
「別にそこまでじゃない。
穴開けたのもピアスが付けたかったからと言うよりは、穴を開けること自体に意味があっただけで」
「意味わかんね」
「うーん、何ていうか、簡単に言うとはやく大人になりたかっただけなんだよ」
穴を開けたところで大人になれるものでもないんだけど、こういうのは気持ちの問題だから。
成長した。私、結婚できる年齢になったんだ。ってことを実感したかっただけだ。
こんなことを言ったらレーくんには益々ガキだと思われてしまうんだろうけど。
「はやく大人になりてえの?」
レーくんが私の膝の上からやけに真剣な表情で聞いてきた。
一瞬ドキリとして返事をすることも忘れていたけど、ほどなくしてコクコクと頷いてみせるとレーくんがおもむろに起き上がって私の頬に手を添えてきた。
「な、なに?」
今にも飛び出してしまいそうなほどバクバクと鳴る心臓を悟られないようにレーくんから少し距離を置く。
けれど私の小さな抵抗にレーくんは機嫌を悪くしたようで、顔をしかめて益々詰め寄ってきた。
「穴開けてまで大人になりたい理由ってなに」
「…そ、んなの、レーくんに関係ないじゃん」
「あるんだよ」
「な、ないよ」
「いいから言えよ」
「…やだ」
レーくんに追いつきたくて、レーくんに少しでも私を見てほしくて穴を開けた、なんてそんな恥ずかしいこと言えるわけない。