ピアスホールに君の熱
「つーか、兄貴の頼みでわざわざこんなところまで来るとか、どんだけ兄貴の前ではいい子ちゃんぶってんだよ」
「そんなんじゃないよ。本当はシーくんがここに来る予定だったんだけど、私もレーくんのライブ見に行きたいって言ったらついでに頼まれちゃっただけだもん」
「ふーん。デートに誘ったつもりがうまくかわされたってことか」
「だから違うってば!」
レーくんは昔から何を勘違いしているのか、私がシーくんを好きだと思いこんでいるらしい。
確かにシーくんに懐いていたのは事実だけど、それは優しいお兄ちゃんに甘えるようなもので恋愛感情とはまったく無関係だ。
むしろ、私が好きなのは…。
「お前、この後どうする?
兄貴に頼まれた用事は済んだんだろ?」
「まあね。シーくんには元気だったとだけ伝えておくよ。
あと、相変わらず自由に生きてるみたいって」
「おー。ま、兄貴にとやかく言われる筋合いもねえしな」
レーくんがふんっと鼻で笑って裏口のドアを乱雑に閉めた。