恋文参考書
ぱくりと大きな一口に、男の子ってやっぱりよく食べるんだなぁ、なんて考える。
細いけど、章も男子高校生だね。
淡々と、だけど確実に、ハンバーガーが吸いこまれるようになくなっていく。
「……んだよ」
「いやぁ、よく食べるなぁって」
「見てねぇでお前も食え」
うん、と頷き、あたしも彼にならってハンバーガーを口に運んだ。
色気もなにもない、ファーストフード店。
安く、気軽に入れるからとここに決まった。
あれだけ放課後はいつも一緒にいたのに、こうして向き合ってご飯を食べることははじめてで、なんだか不思議な心境になる。
章って字だけじゃなくて、食べる所作も綺麗なんだ。
こんななりだけど、育ちはいいのかもしれないね。
……本当にヤンキーか、こいつ。
「お前、さ。原稿はどうなんだ?」
あたしが好き勝手考えていると、章からそんな問いが投げかけられる。
ごくりと飲みこんで、んーと考える。
「調子悪くないし、今週中には提出できるんじゃないかなぁ」
「そうか……」
ポテトをつまみ、作品のことを頭に思い浮かべる。
あたしの中で生きているその子たちのことを話題にあげるのは、こそばゆくて幸せで。
章ならいっか、って。
あたしが書いているものを読んでくれているしって、言葉をこぼした。
「今回もね、戦う女の子が主人公なんだよ。
男装女子! お姫さまを助けに行くの」
「ふーん。女だらけになるな」