恋文参考書
それからは、彼女の存在が気にかかるようになった。
俺が認識したことでたびたび校内で見かけることに気づくと、彼女は様々な場所で雰囲気の違う多くの人と関わりがあることを知る。
どんな人間との区別なく接し、誰もでも仲よくなれる。
俺とはまるで違う人種のようだった。
そのうちにフルネームが日生彩であることも知り、どんな人間かを理解していく。
最初に予想したように騒がしくはあったけど、不思議と日生なら悪くないと思った。
2年になると同じクラスになって、ばかみたいなところやいいところもたくさん見た。
薫に告白することを決意した時、ラブレターの書き方を彩に聞いたのは、部誌を読んでいて作品が好きだったから。
文章を書く力をよく知っていたから。
だけどそれだけじゃなくて、彼女の人柄を信じていたからだ。
俺の人を見る目は悪くなかったらしく、日生が引き受けてくれてから、以前よりずっと彼女をいいやつだと感じる機会が増えた。
日生に頼んで、手伝ってもらってよかったと思う。
だけどそれももう全部終わったんだ。
今日は2月26日。薫の誕生日。
俺は彼女の部屋でふたりきりになっておきながら、なにも言うことができずに固まっていた。