恋文参考書




「ふたりってそんなに仲よかったっけ?
もしかしてどっか行くの?」

「違うよ〜」



ははっと笑いながら追及してくる戸川から顔をそらす。

この場から逃げ出したいのに逃げられない。

そもそもどうしてあたしはこんなに追いつめられているんだろう。



……本当はわかってる。

そこまで多くないけどクラスメートが教室に残っていて、何人かにはこの話を聞かれてしまったから。

金井はよくも悪くも目立つからね。



つまりあたしは悪くない!

けど、今のうちに誤解は解いておかないと、あとで困るんだ。

噂になったら目も当てられないもん。



とはいえやっぱりどうにかならないかなぁ、この状況。



あたしはひとりでこんなに焦っているのに、金井が口を挟む気配は一切ない。



もしもしお兄さん?

あたしなんかと噂になって困るのは君ですよ?

薫先輩に勘違いされてもいいんですか?



そうは思いつつも本人にそんなことを言った日には大変なことになる。

金井はキレそうなんだよなぁ〜。

ついでに噂が広がるのも確定する。



コノヤロウと思いながらも「じゃあ」と言い出す戸川になに? と続きを促す。

少しでも話が変わるっていうなら大歓迎だ。






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