恋文参考書
「じゃあ、今回の試験もなんとかなる!
薫先輩のためによく頑張っていたと思うよ」
文句を言いつつ暴言を吐きつつ、なんだかんだで勉強がはじまれば諦めようとしなかった。
そんな姿を見ていたから。
あたしは今回の結果は心配していない。
答案用紙配るぞー、との先生の言葉に前を向くように促す。
とん、と軽く背中を叩いた。
「大丈夫!」
見られているわけでもないのに、章が安心するようにっこり笑った。
出席番号順に答案用紙は返却され、苗字が『金井』の章は割とすぐに受け取りに行った。
返却中はあまり騒ぐなとのことで話ができるとは思っていなかったけど、章はなんの反応もない。
この時間に返ってくる英語の答案に不安なんてまったくなかったのに、彼の無反応っぷりに冷や汗が流れる。
もしかして悪かったの⁈
それともいいの⁈
少しは態度に示してよ!
あたしの念が届くことはなく、自分の名前を呼ばれ教卓へと向かう。
「日生さん、今回いつもよりよかったわよ」
「やったー、木下先生ありがとう!」
英語教員の木下先生はなにを隠そう、あたしたち文芸部の天使……まぁ、つまりは顧問だ。
優しくて、授業がわかりやすい、とてもいい先生。
文芸部員はみんな木下先生が好きで、英語には力を入れる。
褒められた、とにやにやしながら答案用紙を手に自分の席へと戻る。
すると、なんの気なしに見た机の上には1枚のメモがあった。