雨が降ったから僕らはキスをした。

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くしゅんっ。


「あーあ。風邪ひいたかもなあ」


寒い寒い朝の通学路。


早朝の静まり返った街に僕のくしゃみが響く。

完全に昨日のせいだ。冬の寒い日に長袖1枚で外にでた僕がバカだった。


今日は寒がりな僕だからしっかりダウン着てマフラー巻いておまけにポケットの中にはカイロ。


完全装備だ。なのに寒いのは永遠に問い続けるであろう冬の謎だ。


駅のホームの柱にもたれ鞄から1冊の本を取り出す。最近オススメされたので借りた恋愛小説だ。素直になれない少女と少年の淡い恋物語。


恋ってどんな感じなんだろう。

いままで生きてきて恋なんてものはしたことがないしあまりそういうのに興味がなかったというのも事実。

ただ、恋をしてみたいと思う。この小説にでてくる少女のような純粋に相手を思いやる気持ちとはどんなものなんだろう。


『君に出会ってモノクロだった世界がとても鮮やかに色づいたの』

少女が言った言葉だ。

僕はそっと本を閉じこのモノクロの世界を見渡した。

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