雨が降ったから僕らはキスをした。
お昼休み。
僕達は飲み物を買いに自販機へ向かっていた。
温かい飲み物がほしい僕はスタンダードにお茶を買うがみっちーはわざわざ寒い日に冷たい飲み物を買う変わり者。
彼いわく、
「寒い日に冷たい飲み物を飲む。それがいいんだよ。午後の紅茶ミルクティーのいい感じの冷えた甘さが俺ののどを潤し、元気を与えてくれるんだ」
ということらしい。
まあそれはいいとして僕達はいつもの通り歩いていたわけなのだが。
「きゃあああああああああ」
突如僕の近くで悲鳴が聞こえたと思ったと同時にどさどさとノートが崩れる音が聞こえてくる。
「あ、あの大丈夫ですか?」
僕とみっちーはノートを拾いながら声の主に問いかける。
「ほんと、ごめんなさい。大丈夫です。ありがとうございます」
顔を真っ赤にさせてぺこりとお辞儀をすると顔が見えなくなるほどのノートの束を積み上げてふらふらと歩き出す。
「あの…手伝いましょうか?」
「ぜ、全然大丈夫です!ほんとにいけますから!」
そう言って彼女は向こうへ歩いて行ってしまった。
彼女の透き通った声や真っ赤にさせた顔や必死にノートをかかえるちいさくて細い手とか腕とか。
やけに深く印象に残って一言で言うともう一度彼女と話してみたくて。
「びっくりしたなあ」
呑気にそう言うみっちーに僕は呟いた。
「僕、好きな人できた」