好きになれとは言ってない
 



 小洒落た寿司ダイニングに行くと、遥たちは個室に居て、いきなり拍手で迎えられた。

「リストラ大魔王様が子分を連れて、ご到着ですよーっ」

「あっ、なんで、子分、大葉さんじゃないんですかっ」

 失礼だろ、山村に、と思ってみると、山村は、はは、と苦笑いしていたが、メンバーが社内でもわりと綺麗な子が多く、ちょっと嬉しそうだった。

「遥さん、遥さん。
 人斬り新海さんがやって来ましたよ」
と遥とよく一緒に居る和田優樹菜が遥を呼ぶ。

 正気では言いそうにもないセリフだ……。

 相当呑んでんな、こいつら、と思った。

 誰が、人斬り新海だ。
 さっきはリストラ大魔王とか、俺に向かって言ってたな。

 お前ら全員クビにしてやろうか、と思いながら、数を数え、
「……ちょうど十人居るな」
とぼそりと呟くと、横に居た正気の山村だけが、ひっ、と息を呑んでいた。

 その十人には、もちろん遥も入っている。
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