好きになれとは言ってない
「座ってください、人斬り様っ」
と和田優樹菜が遥の側の赤い座布団を叩く。

 遥はグラスに手をかけたまま眠そうだ。

 そこに行こうとすると、上を向いて自分を呼ぶ女が居る。

「人斬り課長」
「新海だ」

「遥を持って帰ってください。
 酔っていますっ」
と訴えてくるお前が酔っている、と思っていた。

 ちょっと来るのが遅かったようだ。

 正気の奴が居ない。

 遥が眠い目をこすりながら、
「わ、私は酔ってませんよ。
 酔ってるのは、亜紀さんですよっ」
と言い返している。

「いいや。
 あんたは帰りなさい。

 小宮さんに色目使ってないで、さっさと課長に持って帰られなさいっ」

「いやいやいや。
 今、小宮さん、関係ないでしょう。

 山村さん、亜紀さん持って帰ってくださいっ」

 ええっ? と唐突に遥に話を振られた山村が振り返る。
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