好きになれとは言ってない
「課長、ほんと呑み過ぎですよ」

「小宮がやたら、お前に酒を勧めるからだろ」

 そういえば、そんな小宮を鬼のような形相で亜紀が見てたな、と思い出す。

 あの顔を見た辺りから正気になってきたのだが。

 小宮が勧めるたび、航が、
『こいつはもう呑み過ぎだから』
と言って、その酒を自分が呑んでくれていたのだ。

 呑み過ぎですよ、ほんと、と思いながら、感謝して遥は笑う。

 だが、まあ、この酔いっぷりなら、亜紀の言ったことも聞いてはいまいと安堵していた。

 帰り際、亜紀は、
「人斬り課長、ちゃんと遥を送って帰ってくださいよ」
と言いかけて、

「遥、課長をちゃんと送ってよ」
と言い換える。

 ……ですよね、と苦笑いしていると、亜紀は、航に、
「課長、今日はどうもすみませんでした。
 一緒に呑んで楽しかったです。

 でも、今日、なんだかわかりましたよ。
 なんで、堅物の課長がなんで、遥なのか」
と言い、おやすみなさい、と機嫌良く戻っていった。

 まだ呑むつもりのようだった。
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