好きになれとは言ってない
「なっ、なんでですかっ。
 なんでこうなるんですかっ」

 遥は片手で航を押し返しながら、訴える。

「あのっ!
 課長、今、酔ってるんで、誰でもいいんじゃないですかっ?」

「そんなことはない」

 本当か? と思いながら、
「いつも呑んだら、そうやって女の子を連れて帰ってるんじゃないですかっ?」
と訊いてみた。

 だが、航はまた、
「そんなことはない」
と繰り返す。

「この部屋に入った女は母親とインコとお前だけだ」

「インコ!?」

 逃げかけた体勢のまま、遥は訊き返す。

「インコのまどかだけだ」

「……誰ですか、まどかって」

 なんだ、その、唐突に現れた女の名は、と思っていると、
「真尋の友だちの昔の彼女だ。
 別れたから、これ以上名前を呼びたくないというので、真尋は細かい事は気にしないからもらってきたんだが。

 あいつ世話しないから、実家に居た頃から、俺が飼ってたんだ」

「……そのまどか、何処行ったんですか」
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