好きになれとは言ってない
『送ってく間もどうするか迷ってたんじゃない?

 駅まで送っていかなくても、タクシー家に呼べばよかったわけだから。

 正気のときは小賢しいよね。
 計算しなきゃいいのに』

 俺ならしないよ、と真尋は言った。

「はあ。
 真尋さんはいろいろとこだわらない方だそうですからね」
と言うと、

『それ、誰が言ったの?』
と訊いてくる。

「課長です。
 真尋さん、お友だちの彼女の名前のついたインコをもらって来られたとか」

『ああ、まどかね』
と言った真尋は、

『気にならないよ
 俺も前、まどかと付き合ってたしね』
と軽く言ってきた。

 ……いや、そこは気にしてください、と思っていると、真尋が、
『ところで、兄貴に迫られたとき、なんで逃げたの?』
と訊いてきた。

「えっ? 普通、そこは逃げるものではないですか?」
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