好きになれとは言ってない
 



 うーん。
 まあ、よく考えたら、女子が結婚相手を見つける会だから、男の人は、よその会社の人でいいのか。

 課長、真尋さんも誘ってみたようだしな。

 断られたみたいだけど、と思いながら、お昼休みのあと、備品を届けに渡り廊下を歩いてると、小宮がやってきた。

「あ、遥ちゃん、おはよー」
と一見、爽やかそうに手を挙げ、

「昨日は楽しかったよ。
 また呑みに行こうねー」
と言ってくる。

「はい、ぜひ」
と一連の社交辞令に返しながらも、

 うーむ。
 貴方のお陰で、なんだか大変なんですが、と思ってはいた。

 だが、確かに愛想がいい方が話していて気持ちがいいし、楽なところもあるな。

 それで好きになるかと言われたら、ならないが。

 しかし、小宮さん級のイケメンか。

 やっぱり、真尋さんくらいしか思いつかないんだけどな、と思っていると、今度は、向こうから航が来た。

 緊張すまいと思っているのに、つい、手にしていたボールペンの束を握り締めてしまう。
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