好きになれとは言ってない
「お、おはようございます」
と頭を下げたが、航は、

「昼だろ」
と素っ気なく言って行ってしまった。

 遥は足を止め、振り返る。

 こら待て、新海ーっ!

 昨日、私を手篭めにしかけたくせに、なんだその態度ーっ、と人様に渡すはずのボールペンの束を投げつけそうになる。

 あのお部屋に入れてもらったのが、私とインコとお義母様だけだとしても、どうせ、私の位置づけは、お義母様どころか、インコのまどさかさんより下ですよーっ。

 事業部に行くと、遥に急ぎだからとボールペンを頼んだ男は居なかった。

 代わりに、ちょうど別の用事で来ていたらしい亜紀が居た。

「亜紀さん、篠田さんは?」
と備品を渡すはずの男の名を低い呼ぶと、

「……ど、どうしたのよ、急にやさぐれて」
と怯えたように言ってくる。

「亜紀さん、私、考えを改めました。
 やっぱり、男の人はチャラい方がいいかもしれません」
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