好きになれとは言ってない
「いらっしゃいませ」
と真尋は顔を上げた。
来た客は、常連のOLさんたちだった。
にこやかに挨拶をする。
今日は遥ちゃん、来ないのか、と真尋は他にあまり光のない道で、ぽうっと光る自分の店の看板を見た。
そんなに量を食べる方ではないのだが、実に美味しそうに食べてくれる遥には作り甲斐がある。
航と並んで、楽しそうに焼きそばを食べていた遥を思い出し、なんとなく自分も食べたくなった。
今日の晩ご飯は焼きそばにしようかな。
そういえば、今日は兄貴も来ないのか、と時計を見、水の用意をしながら、またガラス越しに暗い夜道を眺めた。