好きになれとは言ってない
 



「遥、もうお風呂入ったのー?」

 そう母親に言われ、寒いのにアイスを食べながら、遥は、うんー、と答える。

 まだ髪も乾かしてはいない。

 タオルで髪を巻いたまま、その番組に見入っていた。

 パワースポットが今、女性に人気だという特集だ。

 みな、なにを願ったのかと問われ、結婚できますように、とか好きな人と上手く行きますように、とか言っている。

「遥、下がりなさいっ。
 あんた、子どもっ?」
とキッチンに居る母親に怒鳴られる。

 親戚のまさくんや姉の子のように、どんどんテレビに近づいて行っていたようだ。

 うーむ。
 パワースポットか。

 行くと運気が上がるのか、と食い入るように見ていると、

「なによ、あんた、そんなもん見ちゃって。

 上手くいってないの?
 あの立派な彼氏と」
と言いながら、子どもを寝かしつけてきたらしい姉が二階から下りてくる。

 義兄が出張に出たので、泊まりに来ていたようだ。
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