好きになれとは言ってない
「兄貴。
今日は随分早いねー」
航がカウンターでメニューを見ていると、真尋がそう言ってきた。
遥め。
何故、いつもの電車に乗ってない。
ちらと総務を見たら、もう居なかったので、帰ったと思ったのだが。
渋い顔でメニューを眺めていると、
「なんにする?」
と訊かれた。
「焼きそば。
……ニンジン入りで」
と言いながら、食べないでーっ、と胸を押さえて叫んだ遥を思い出し、笑いそうなような、切ないような、不思議な気分になる。
「はい、了解」
とまるで、自分がなにを考えているのか見透かすように笑って、真尋は言った。