好きになれとは言ってない





 用もないのにブラブラしていた自分が莫迦みたいっていうか。

 なんかむなしいというか、恥ずかしいというか。

 眠る前、そんなことを考えながら、遥は枕を叩いていた。

 枕の神様に、起きたい時間を頼むのだ。

 起きたい時間の数だけ叩けば、その時間に目が覚めると小学生のときに聞いて以来、実行している。

 みんなに言えば、いや、目覚ましをかけろと言われそうだが。

 叩く手を五回で止めかけ、いや、と思い直し、七回叩く。

 明日はギリギリまで寝てやる。

 宮司さんの嘘つき、と会ったこともない宮司さんを罵った。

 これでは、あとでパワースポットに行ったところで、ご利益はなさそうだ……と思いながら。






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