好きになれとは言ってない
 貴方は運転中、赤信号になると、反射的に助手席の女性にキスしてしまうのですか。

 うむを言わさずですが。

 ……その積極性、ちょっと課長に分けて欲しい、と思ってしまった。

 窓を流れる景色を見ていると、なんだろう。
 課長に会いたくなってしまった。

『航だ』

 いつ聞いたのだろう。
 課長の声が耳に蘇る。

 聞いているだけで、どきどきするが、不思議に落ち着くいい声だ。

『航。
 俺の名前だ。

 知ってるか?』

 あれは……もしや、呼べという意味だったのでしょうか。
 その名前で。

 いやいや。

 いやいや……と思いながら、課長、今、課長に会いたいです、と此処に居ない航に向かい、呼びかけた。

 まだ大きな道を走っているので、窓からの眺めは明るく鮮やかだ。

 こうして見ていると、いつもピカピカ綺麗で、クリスマスみたいだな、と思ってしまう。

 クリスマスコンパか、と思ったとき、真尋が言った。
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