好きになれとは言ってない
 まあ、向いてないよね、とさすが兄弟、真尋もそれを認めたが、いや、それより心配していることがある、と思っていた。

 課長は、本当にあと十人もリストラ出来るのだろうか。

 無事にこの役目を終えられるのだろうか。

 航の妙に潔いところがなんだか怖い。

 そんなことを考えている横で真尋が言う。

「そうかー。
 出世しそうな男に、特に興味はないわけね。

 じゃあ、俺も別に、次々チェーン展開とかしなくても、遥ちゃん的には駄目ってこともないのか」
と言ってくる。

「チェーン店ですか?」

「そう。
 儲けようと思ったら、あの一店舗じゃ無理だろ」
と言ってくるが。

 遥は少し考え、
「真尋さんの店はチェーン店は出せないと思います」
と言った。

 うっ、と真尋はつまる。
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