好きになれとは言ってない
「確かに、儲かってないけど。
 手厳しいねえ」
と言う真尋に、

「違います。
 真尋さんが、二、三人いらしたら、チェーン店も出来るのではないかと思いますが。

 真尋さんはひとりです。

 みなさん、真尋さんの店には、美味しい珈琲を飲みに行ってるだけじゃないんです。

 真尋さんに会って、ほっとしたくて行ってるんです」

「……遥ちゃん」
と呼びかけてきた真尋に、

「すごくいい話だけど、珈琲、一度でも飲んでから言って」
と言われてしまう。

 うっ。
 すみません、と謝ると、真尋は笑う。

 でも、本当だ。

 みんな珈琲だけではなく、真尋に安らぎを求めて行っているのだ、きっと。

 それは自分もそうだから。

 いや……珈琲は飲んでませんけどね。

 美味しいですよ、真尋さん、ナポリタンと焼きそば、と思っていると、真尋はそっと笑って言ってきた。

「……俺の方がみんなからもらってるものが多いと思うけどね」
と。




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