好きになれとは言ってない
道順を説明することなく、車は遥の家に着いた。
「すごいですね、真尋さん」
と言うと、真尋は、
「いや、普通、一回来たら、わかると思うんだけど……」
と言ってくる。
はは、と苦笑いしていると、真尋は遥を見つめて笑う。
その顔を見ながら言った。
「ありがとうございました。
楽しかったです。
本当にいつも、真尋さんにはお世話になってばっかりで。
感謝してます」
「いや、俺の方こそ、毎度笑えて、楽しいよ」
うっ、とつまっていると、
「まあ、また来てよ」
と微笑んでくれたので、はいっ、と勢いよく返事した。
今度は綺麗な人をいっぱい連れていってあげよう、と感謝しながら、降りようとしたとき、何故か、ドアにかけた遥の手に、真尋の手が触れた。
おや? と振り返ると、いきなり真尋がキスして来ようとする。
「まっ、真尋さんっ」
と遥はドアに張り付くように、飛んで逃げた。
「今、赤信号じゃないですっ」
そう叫ぶと、真尋は吹き出した。