好きになれとは言ってない
「いや、赤信号で反射的にするってわけじゃないんだけど」

 それ、どんな呪いだよ、と真尋が笑っている間に、車の音がしたせいか、母親が出て来た。

 真尋は車から降り、にこやかに母親に挨拶する。

 何事もなかったかのように。

 まあ、真尋さんにとっては、なんてことないことなんだろうな。

 彼の住んでいる世界ではきっと、女の子を送っていったら、降り際にはきっと、キスしなければ、失礼なのだろう。

 そんなことを考えていたら、姉までが出て来た。

 ……また来てるのか、姉。

 家は大丈夫か、と思っていると、真尋が帰ったあと、中に入りながら姉は言ってきた。

「そっくりじゃん、あんたの大魔王様と」

 いや、あんたまで、大魔王様と呼ぶな、と思っていると、
「でも、私は、今の人の方が好みだなー」
と言ってくる。

「じゃあ、お店、行ってあげなよ。
 落ち着いた……」
と言いかけ、いや、落ち着いてないな、と姉を見ながらも、

「美人が好きなんだって」
と言うと、

「あらーっ。
 じゃあ、行かなきゃね」
と言う。
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