好きになれとは言ってない
「笑った顔が好きだったの。

 隆弘さんが、うちに遊びに来て、お母さんたちと話してるのを見たとき、その違和感のなさに、ああ、私、この人と結婚するのかなって思った。

 まあ、頼りなさそうに見えて、芯もしっかりしてるしさ。

 チャラくないし。

 ま、そういう意味じゃ、あんたの軍人さんと変わらないか」
と言ってくる。

 いや、だから、課長、軍人じゃないし。

 人斬りとは呼ばれてるけど。

 ……でも、青年将校の格好とか似合いそうだな、とちょっと思ってしまう。

「隆弘さんも、あっちから押してくるようなタイプじゃないから、結婚も結局、私が決めたようなものね」
と言われ、えっ、と言ってしまう。

「今どきの男はみんなそうよ。
 それか、ストーカータイプで束縛が強いか」

 ……偏見だ、と思うが、自分より経験豊かな姉の言葉なので、なんだか反論できない。

「実家に居る方が楽だから、なかなか結婚に踏み切らなかったりするし。

 言いそうにないわねえ、あの大魔王さまも。

 でも、あんたも押してくタイプじゃないし、前途多難ね。

 やっぱり、どっちかが積極的でないとね。

 京都にでも行ってきたら?
 願掛けに」
と言われてしまう。
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