好きになれとは言ってない
 


 部屋に入った遥は、ふう、と溜息をつく。

 京都へ行け、か。

 確かに、なにかこう、煮詰まっている……。

 停滞しているというか。

 コンパというつながりがなければ、課長はよその課の課長だし、電車も大抵一緒にはならないし。

 そうだ。
 コンパが終われは、なにも関係がなくなってしまうのでは……と遥は青くなる。

 そして、私は用済みだと捨てられるに違いない。

 いや、付き合ってもないのに、捨てられるっていうのも変だけど。

 ……それにしても、コンパか。

 そうだ。
 トナカイ探さなきゃ、と思う遥の頭の中では、トナカイの毛皮を着て、グラスを運んでいる自分の前で、航が美女に言い寄られ、満更でもなさそうにしていた。

 殴りますっ、と航に、何故だ……と言われそうなことを思ってしまう。

 だって、小宮さんが来ようと、真尋さんが来ようと、大葉さんたちが来ようと、課長が一番格好いいから、みんな課長の方に行ってしまうに違いないですっ。

 と、亜紀が聞いていたら、手招きをして、殴ってきそうなことを思う。
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