好きになれとは言ってない
「奴らオウム返しに、全部しゃべるからね」
と言うので、

「それなんですけど。
 なんで、オウム返しって言うんでしょうね。

 インコでも、九官鳥でも」
と言うと、……知らないわよ、と言われる。

「でもそうだ。
 まどかさんがオウム返ししてくれて、課長に、そっと私の気持ちが伝わるとかないでしょうか」
と言うと、

「意図的に覚えさせるの?
 課長、好きです、とか?」
と訊いてくる。

「いやそんな、ストレートな。
 恥ずかしいじゃないですか」
と赤くなると、じゃあ、なんて言うのよ、と訊かれたので、

「そうですね。

 ええっと。
 課長の側に座って電車で通いたいです、とか。

 たまに本の貸し借りしたいですっ。

 あっ。
 真尋さんのお店にも一緒に行きたいですっ。

 お義母様とも、また一緒に呑みたいしっ」

 つらつらと願望を連ねてしまうと、

「長いわよ
 そして、ささやか過ぎるわよ」
と言われてしまう。

「そんなことは口に出して言いなさいよっ」

 もっと他にないのっ、と言われれた。
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