好きになれとは言ってない
 結婚退職を希望している人がうまく話がまとまってくれるといいんだけど。

 ……そしたら、きっと、課長も会社を辞めないでいてくれるから。

 そんなことを思いながら、夜空を見上げ、唯一、それしか発見できない星座を見つけた。

「課長、今日も、爆発してません」
と報告すると、阿呆か、と言われたが、

「だって、いつしてもおかしくないとおっしゃってたじゃないですか」
と笑う。

 なんだろう。
 課長は居ないのに、一緒に歩いてる感じだな、と思っていた。

『遥、絶対、携帯を離すなよ。

 今度、スタンガンを買ってやる。

 いや、それより……』

 それより、なんだろう、と遥は思う。

 それより……

 送らなくていいよう、一緒に暮らそうか、とか。

 なーんてっ、と一人で勝手に考えて勝手に赤くなっていると、
『どうした?
 大丈夫か?』
と航が言ってきた。

「す、すみません……」

 ほ、本当に大丈夫か、私。

 どうやら、話している途中なのに、妄想の世界に入り、沈黙してしまっていたらしい。
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