好きになれとは言ってない
メリークリスマス ~トナカイより愛を込めて~
「これだ、これしかない」
そう思って、遥はついに、ぽちりと通販サイトのボタンを押した。
迷って迷って、ついにトナカイの着ぐるみを買ったのだ。
なのに――。
「遥ちゃん、知り合いに問屋さんが居るんだけどさ。
棚落ちで戻ってきたトナカイの着ぐるみもらったから、これ着なよ」
と真尋が小さな箱に入った着ぐるみを渡してきた。
なるほど。
蓋の開いた箱の中には、ビニールに包まれたトナカイのかぶり物が入っている。
「あ、ありがとうございます~。
でも、遅かったです。
昨日、ぽちっと買っちゃったんですよー、着ぐるみー」
と言ったのだが、何故か真尋は、
「いや、俺は遥ちゃんがそれ着ないなら行かないからね」
と言ってくる。
カウンターで、亜紀や朝子たちが、それは駄目ーっと、叫んでいた。
「真尋さんが行かないなら、私たちもコンパ行きませんーっ」
いや、行くだろ……と思って、横目にそれを見ていた。