好きになれとは言ってない
番外編 本当のクリスマスがやってきました
俺のクリスマスは終わっている……
巷に、派手なイルミネーションやツリー、煌びやかなリースにサンタが溢れている十二月。
華やかな通りを歩きながら、おかしい、と航は思っていた。
まさか、今からクリスマスだとか?
何故だ。
自分の中のクリスマスはもう終わっているのに。
だが、無意識のうちに受け取った居酒屋のチラシには、忘年会と、その、もう終わったはずのクリスマスのパーティプランがデカデカと載っていた。
あれだけ、コンパの夜、盛り上がり、まどかさんもメリークリスマスを連呼していたのに。
遥にはクリスマスプレゼントを渡したし、可愛いトナカイ姿も見られた。
いや、見られたというか……。
実際のところ、あまりよく見てはいなかったのだが。
なんだか照れくさくて直視できなかったのだ。
いつか、ぜひ、二人きりのとき、着て欲しいと、口には出せないが、切望していた。
だが、いつぞや、真尋が、
『兄貴の前だけで着ちゃ駄目だよ。
着るのなら、返して』
などと遥を脅していた。