好きになれとは言ってない
「でも、それだけじゃないぞ。

 本も読むし、映画も見る。
 友達と温泉行ったり」

 意外だな、と思っていた。

「課長、お友達居たんですねえ」
と言うと、お前、どんだけ失礼なやつなんだ、という目で見られた。

「まあ、社内にはあんまりな」
と言うが、そういえば、大葉さんとか、小堺さんとか、社食には一緒に来てるか、と思い、何故かちょっと、ほっとした。

 リストラ大魔王なんて呼ばれているせいか、航にはあまり近づかないようにしている人も多いのを知っていたからだ。

 変に目をつけられたくないからだろう。

 そうかと思えば、航の父親くらいの年なのに、変に彼に媚びを売る者も居て、彼は、いつも鬱陶しそうにしていた。

 こうして話していると、普通の人なんだがな、と思いながら、
「あのー、課長はなんで、リストラする役を引き受けられたんですか?」
と訊いてみる。

 特に出世欲があるようには見えなかったからだ。
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