好きになれとは言ってない
「遥はクリスマスはどうすんの?」
ふいに亜紀にそう訊かれた。
昼食後の小会議室。
自動販売機で買ったたこ焼きとアメリカンドッグを高いよねーと言いながら、みんなで分け合っていたときのことだった。
上を見て少し考え、
「クリスマスって、まだ来てませんでしたっけ?」
と言うと、
「……なに言ってんの。
カップル一番のイベントでしょ」
と亜紀に言われた。
もう終わったかと思っていた、と遥は苦笑いする。
遥の頭の中はもう、クリスマスを飛び越え、お正月になっていた。
航を正月に家に呼べと母親が言い出したので、なんて言って呼ぼうかなあ、といろいろ考えていたのだが。
日曜日、遊びに来た航に、姉が、
『航さんも来るんでしょ?』
とあっさり言って、
『あ、はい』
で終わってしまった。
ほっとしたような、拍子抜けしたような。